ジ・コントローラー19『多重人格分析』

僕達2人は、飯塚の手を離れた後、森の中をひたすらに走っていた。




「ハアハア…匠さん、犯人はなんで人間狩りなんてするんですかね」




「文雄はミリタリーマニアで対人恐怖症だったからその2つが狂気を生み出したんだろう…そういうホラー映画も棚に並んでたしね。普通は追われる方に感情移入するものだけど、彼は追う側にシンクロして観ていたんだろうね」



そう…僕が文雄の部屋を見て腑に落ちなかった理由の一つは、棚のホラーのDVDに比較的新しい物があったからだった。



供養のために故人が好む物を買っておくのはよくある話ではあるだけに、大きな引っかかりにはならなかったんだけど。




「でもそんな多重人格なんて本当にあるんですか?」



「海外では日本よりは例が多いし…日本でも昔から霊や狐に取り憑かれた話があるけど、あれなんかには、おそらく多重人格の症例が含まれていると思うよ」




「どうして多重人格になるんですか?」




「多重人格が発生する理由としては幼児期での虐待が理由になる場合が多いんだよね


『今嫌な場面に遭遇している自分は、自分じゃなく他人なんだ』


と思い込むところから別人格が登場すると言われるている。日本では海外程虐待が無いから、当然珍しいワケなんだよ」



「じゃああの人も…?」




「いや、おそらくはもう一つのパターンだろう。故人を大事に思うためにその人の事を考えてしまい、何かのキッカケで故人になりきった人格が生まれるというケースもあるから…」



「でも…いくら多重人格だからって、あんな女の人が私達を軽々と担げますかね」



「うん…人格交代によって怪力を得たり、喋りが行ったことの無い国の言葉に変わったりするケースもあるからね」


ビリーミリガンでも粗暴で、素手でトイレを破壊する程の力がある“レイゲン”という人格が存在していた。



他にも行った事の無い国の言葉を話したり、見たこともない場所の話をするという多重人格者も過去例があるしね。






「人格が戻ったらもう私達を殺そうとはしないですかね」



「そりゃそうでしょ。だから長時間逃げていれば勝機はやってくるさ」




「あの…なんでこんな状況なのに落ち着いて…ニコニコしていられるんですか?」




「ん? フフ…僕が慌てたら君も不安になるだろう? 僕は万物を司る“コントローラー”だからね」