ジ・コントローラー18『天敵』

「でも…女性でしたよ」



「うん…つまり、彼女は二重人格だったんだ」



「二重人格!?」



「飯塚文雄は本来死んでいる。だけど、妹明美の中にその人格が残ったようだね」




この事件の初期のプロファイルでは、犯人は明らかに男性的要素が強かった。



そもそも女性が女性に無差別殺人の人間狩りを楽しむという性癖は、僕の知る限り古今例がないしね。



そして文雄の部屋…



『明美が片付けている』



と父親は言っていたが、その明美の前で部屋を乱しても、彼女は何の反応も無かった



これは明美に乗り移った飯塚文雄が掃除をしていたからで、つまり明美も父親も、お互いが掃除をしていると思っていた訳だ。



「じゃあ女の人は別人格なんですか?」



「そうなるね。彼女は文雄が出てきている間、なんの記憶もないだろう」



「そんな事があるんですか…」




「実話を元にした小説『24人のビリーミリガン』では24人もの人格を持ったビリーが主人公だし、海外では解離性障害は珍しくないけどね…」



ただ、プロファイリングに多重人格は天敵と言える存在である事は間違い無かった。



“結果”



から過程を推測するこの技術に、根本的に別の人間が過程を担当するならば、一致する筈がないからだ。



最初から多重人格を想定したら?



ならば全ては稀なケースの多重人格のせいになってしまうよ。


つまり、多重人格はプロファイリングの


“天敵”



なのだ。




さて…僕がいつ多重人格に気付いたか?



残念ながらそれは僕のプロファイルが


“外れた”



時だった。


つまり富士平署で事件のファイルを見た時だよ。



プロファイルが外れた事は無いが、もしも外れるなら、それは相手が多重人格である場合だという風に、僕は会得した時から思っていた。



結局は予測が



“当たった”



んだけど、なんだか複雑な気持ちだね。




「あ、ちょっと待ってくれる?」



「どうしたんですか?」




「追ってくるって事はおそらく犬を使うだろうから、僕のシャツをこの辺りで別方向に投げておくよ」



こうしておけば犬はどちらに行くべきか混乱するだろう。



「さすが…」



「じゃあ向こうに走ろうか」




僕達は走り出した。




それが地獄に向かっているともわからずに…。