ジ・コントローラー16『捕獲=計算』

「…という訳で僕は今ここに居るんだよ」



「そうなんですか…でも、父が気づいてくれれば…」



「ちょっと難しいだろうね…それよりは僕達がここを出る確率の方が高い」



「!? 殺されるかもしれないんですよ?」



「フフ…僕はね…魔法が使えるんだよ」



「じゃあなんで捕まってるんですか!」



「君、僕のアシスタントみたいな突っ込みをするね。君に会うためだよ」




“捕まりたかった”




これは本当。


僕の事件解決に向かって幾つか用意していたオプションの中でもプライオリティが高いものだった。


捕まってしまえば少なくとも美咲さんと同じ場所に監禁される事は予想できたから、まず彼女を見つけるという最初の目的は果たせる。



敵のカンに触るように全ての容疑者宅にズケズケと上がり込み、無神経かつオーバーに振る舞い、さらに日影舘さんを切り離したのはこれが狙いだった。




都合良くさらってくれなかった場合?




フフ…もう少し乱暴な手段を考えてたよ。




「しかしこれで君の救出における最大のポイントをクリアできたな」



「じゃあこの後どうするんですか? 犯人がまた…」



「今は夜だから…犯人は朝までこないよ」



「なんでわかるんですか?」



「“狩り”をするには暗すぎる」



「狩り?」



「犯人は明日僕達を兎や猪みたいに狩りたいんだよ」



「え…」



「心配ない。僕がいるから。とりあえず今から犯人対策を考える事にしようかな」



さすがに刑事の娘だけあって、身の凍るような言葉を使われても、彼女はあまり取り乱さない。



「あの匠さん…ここはどこなんでしょうね。携帯、通じないんですけど」



「携帯?…ああ、なんだあるんじゃないか…。通じないから取り上げる必要が無いわけか。樹海のどこかだろうね。ところで美咲さんは犯人に関して何か知ってる?」



「あまり…後ろから殴られて、気がついたらここにいましたから」



「じゃあ姿も見てない?」


「はい」



「声も?」



「はい…犯人はどんなヤツなんでしょう」



「飯塚文雄…といいたいところだけど…」



その後僕は彼女を暗示で眠らせ、犯人についてあらゆるパターンをシミュレートし続けた。



そして意外な“もしも”が僕の中で膨らみ始めた頃、ついに夜があけた…。