ジ・コントローラー13『悩ましき胸中』

「カイム新教が富士に本拠地を移す直前に、下調べを兼ねて近隣の若者を勧誘したんですよ。文雄も最初は引っかかって…」



「ふうん…」



カイムに入っていたという事は遠金さんと面識があった可能性もある。



これで文雄が生きていれば犯人の可能性が強まるが、なにしろ彼はこの世にいない。



「カイムは亡くなるまで…?」



「いや、揉めたみたいですぐ抜けてきましたよ。カイムが引っ越してきて1ヶ月くらいですか。ただ、抜けて直ぐに事故を起こしたんでね…アイツの人生、これからだったんですけどね…」



そういう時系列か…



「どんな事故だったんですか?」



「車で信号待ちしてるところに対向車が突っ込んできたんですよ。トラックだったもんで即死でしたわ…」



「顔もグチャグチャ?」



「いえ、そこまででは」




顔がグチャグチャだった場合、整形し名前を変えて過ごしている可能性もあると思ったんだけど…ドラマみたいにはいかないね。




「妹さんと話したいんですが」



「あいつは街道沿いの蕎麦屋に勤めてるもんで…8時半くらいに帰ってきますよ」



「ではその頃また来ます







僕達は車に戻った。



「この後どうする? あの2人をしょっぴくか?」



「いや…妹の話を聞く前に動きたく無い。今日の情報を整理して、夜妹に会いに来ましょう」



「じゃあどうするんだ?」



「一瞬ホテルに戻って考えます。日影舘さんは逮捕したカイムの人間に、飯塚が何故カイムを抜けたのかを調べてください」



「おお、じゃあ電話して取り調べをやらせるよ!」






“七手先を読む”





そう言われる僕でも、今回の犯人を割り出すに当たり不透明な膜が邪魔をして本領を発揮できていない…気がした。



日影舘さんには言えないけどね。







ホテルに戻った僕は、あの時以来田邊君に一切連絡を入れてない事に気付いた。



「…という訳なんだよ田邊君」



「もう! 無事ならもっと早く教えてくださいってんですよ!」



「ゴメンゴメン、怒るなよ…誰か僕を訪ねて来たりしたかい?」



「依頼は無いです。電話は窪さんからありました。先生が戻ったら折り返させるって言いましたよ」



「窪さん? なんだろうな突然。案外リストラでもされたりしてね」



「きっとたいした用事じゃないですよね」