ジ・コントローラー10『手がかり発見?』

「ひろこさんは…どっかにいっちゃったんだよ」



レスラーのような身体を丸めながら、怒りとも悲しみとも言える不思議な表情を僕にぶつける彼は、自分が他人と違う事に気がつきながらもどうしようもない現実に憤りを感じているようだ。



僕らのような外からの接触者は、彼の世界には招かれざる客なのだ。



それは隣で下を向き続ける母親にとっても。




身体は大柄でも心は子供。


彼は良くも悪くも自分に忠実なのだ。




「ひろこさん、どこにいるかしってるの」



「残念ながら知らないんだ。少し…部屋を見せてくれるかな?」



「いいよ」




「部屋は、あの…」



母親が口を挟む。



「捜査の一環ですぞ」



こんな時日影舘さんの押しは便利だね。




「はい、ここだよ」



「うん…?」



六畳程の和室の中はそこそこ整えられている部分と乱雑な部分が混在していた。




そして僕の目を奪う道具が、学習机の上に置かれている事に気づく。



「これはなんだい?」



「ひろこさん」



それは、カツラをチェンジできるその人形とその髪の毛だった。



更に積まれている本の中にはヘアカタログがある。



「君は髪の毛が…好きなの?」



「ぼくはびようしになるのがゆめなんだ」



「匠! これは…」



さすがに日影舘さんも反応する。



「まだ早い。ねぇ、最近人を好きになったかい?」



「んーん。ひろこさんだけだよ…」



「ありがとう。もう仕事に行っていいよ。お母さんは二、三質問していいですか?」



「はい、では下で…」



「じゃあぼくはいってきます。ばいばい」



「運送のバイト…でしたっけ?」



「はい…私の兄が経営しておりまして、あの体格ですから荷物を運ぶだけならばと…



「ふうん…お母さん、我々がどんな事件でここに来たか気にならないんですか?」



「…聞きたくないんです」



「できる限り彼の起こす問題に関わりたくないんですね。そう思わざるを得ないほど彼には苦情が多い…」



「はい…あの体格ですから、猫を撫でれば骨折させたり…力の加減が出来ないみたいで…根本的には心優しい子なんですが…」



「なるほど。ありがとうございました。後でまた連絡するかも。…日影舘さん、次に行きましょう」




「つ、次? ここが最後だろ?」