窪は儚き夢を見る08『振り出しに戻る』

『2月16日』


「…………………………」




「…イテ…」



「痛い〜!」



ん?



夢…じゃない…



「痛風でてるよ、痛い痛い!」



薬は…と。



「はあ…良くなってきた…風が吹かなくても痛いのに」




…8時?




「もうこんな時間だ!」



でもなんか違和感が…何か忘れるているような気がしますけど…。



「昨日深酒しすぎたかなぁ。まあ会社に行けば思い出すだろ…」




独り暮らしだとね、1人言が普通になっちゃいますねって…アレ?



「そうだ! 会社クビになったんだ」



トホホ…用意してしまいましたよ…。



「…よし、今日は職安に行ってみようかな。まずはゆっくり風呂に入ろう」




「フフフフンーフフフフン(ベートーベン・運命)」




こんな日だとつい鼻歌も運命的になっちゃいますね。






そういや職安ってのは初体験なんですよね。



つまり初転職。


贅沢は言わないからやった事の無い花形の職業がいいですねぇ。



ITなんかいいなあ。



流行りのソーシャルなんとかっての。



やった事?




ないです。



電脳世界にはとんとうとくて。




携帯?



らくらくホンですよ。








「という訳で、大手IT系の仕事があればぜひ。ソーシャルなんとかでもいいです」




「…はあ?」




「はあって?」




「失礼。あのね…ITの経験は」



「いやだから、15年印刷所に勤めてましたから」




「じゃあ…取り柄は?」




「え…と…優しさ…ですかね」




「アンタどっかの頭痛薬じゃないんだよ。もっと仕事に役立つ資格とかないの」



「写植が打てます」



「…どうしてITがいいの」



「えと…流行ってる…から?」



「あのねぇ! IT企業が40歳の印刷所しか経験の無い人を雇って何の仕事をさせるの? しかも志望動機が流行ってるからって、小学生より短絡的じゃないの!」



「すいません」



「中年の再就職で前の仕事から条件や人気度合いがアップするところなんていける訳ないでしょう! もっとちゃんと希望を下げないと絶対見つからないよ」



「じゃあどんなところがありますか?」



「ありません! だから条件を下げて特技をいかした希望を出して!」



この人威張ってるなあ…