窪は儚き夢を見る06『プリンとの戦い』

「ありがとうごぜいました! この恩は一生忘れんです!」



「あ、はい。お婆ちゃんによろしくね」



「東京にはこんたらいい人がいたって村中にいいふらしときますがら!」




トホホ…ぼったくりでもないのに自分から金を払ってしまいましたよ。



しかも退職金全部…



うう…




泣けてきた…




「そしてお腹減った…」



「窪さん!?」



「おお、ヨネちゃん!」



ヨネちゃんは二歳年下の友人で、小さなデザイン事務所をやってます。



「どうしたんですかこんなオヤツの時間に新橋にいるなんて」



「あ、もう三時なんだ。昼ご飯食べようと思って新橋来たのに…」



「あれ、会社は?」



「それが…」



アタシはいきさつを話し、今日は仕事が終わったというヨネちゃんと居酒屋に入りました。



「三時過ぎなのにもう人いますね、さすが新橋。しかも昼酒飲んでるだけあってみんな仕事が嫌いそうなサラリーマンばっかり…」



「ね? 癒やされるでしょう?」



「…そうですかね?」



「いや決めつけて悪いけどあんまり仕事できそうな人いないじゃない。ああ仲間なんだなあと…」



「僕、今元気ないんで余計そういう水に浸かりたくないですけど…」



「なんで元気ないの?」



「女にふられたんです」



「ああ…」



「付き合おうと思って指輪買って…いざ渡したら『いらない』って…」


「ど、どこで渡したの?」



「デニーズです」



「ムードとか考えれば良かったのに…」


「彼女もそういうデリカシーが無い人とは付き合えないって」


「そ…そうなんだ…」



「死にたくなりましたよ」


「いや…元気出してよ! 奢っちゃうから。なんでも頼んでさ!」


「じゃあ生おかわり。あとカニミソとうにとレバ刺し」



「見事にプリン体を…」



「あ! 窪さん痛風でしたっけ! すいません、気を使ってる余裕がなかったです…




そう、アタシは結構な痛風なんですよ。



人生三大激痛その二。



右足の親指の痛みときたら…焼けた針を



グサッ!



と足の指の付け根に刺されたような痛みが長時間走り続けます。



あの痛みを考えると、プリン体に精神的抵抗が生まれますよ…。




「ああもう死にてえ!」



「元気出してよ、よ〜し得意芸を披露するから!」