窪は儚き夢を見る04『中年イオン』

「とりあえずさ、パーッと飲みに行ったらどう?」


「いや、それ昨日やったんですよ…。で、記憶を無くしたの。おかげで全部忘れて、今日はツイてると思ってたらむしろ逆だったわけ」



でもまあこんな時は…友達と飲むのもいいかもしれません。



頼りになる友達…いた!



電話番号は…と


「はい、もしもしタクミアサインです」



「もしもし? あの、窪と申しますが匠君、いますか?」


「窪さん…あー! 冤罪事件の!」


「そうそう。助手の…田邊さんでしたっけ」



「はい。あの、ごめんなさい…先生今ちょっと事件に巻き込まれてていないんです。もう少しで皆さんにお会いできると思うんですけど」


「あ…そうですか。じゃまた…」


「ごめんなさい」


…まあ…こんな平日の昼前なんてみんな忙しいよな。


暇なのはアタシくらいですかね。


「窪ちゃん、なによ1人いなかったくらいで。他に友達いないの?」


「リストラされといて同僚とは飲みづらいですからねぇ…」


こんな時は憩いの街にでも行ってみますかね。


「とりあえず新橋でも行ってみますよ。お勘定」



新橋へは神保町から三田線で、内幸町で降りるんですよ。


なんで新橋?


うーん…落ち着くからですかねぇ。



みんなアタシみたいなこう…何かにくたびれた同世代がいっぱいいるでしょう。


六本木なんかだと歩いてるだけでドキドキしちゃって。


外国きたみたいですもんねぇ。


子供の頃から不良にカツアゲされてきたからですかね、からまれそうな場所が苦手で


また年取った今でも見事にからまれますからね。


新橋のおじさん達は見るからにからまなそうでしょ?


そこが最高にヒーリング効果があるんですよ(笑)。


マイナスイオンみたいな『中年イオン』が出てるんだよなあ。




「内幸町ー内幸町ー」



「おっと、ついた」



おお、癒やされる。



まずは腹ごしらえでも…




「社長!」


「…アタシ?」


「そう、社長の事ですよ!」


「いやアタシは社長じゃなくてリストラされたばっか…」


「社長に今物凄いチャンス! 今日物凄い女性があなたを待ってますよ! エロエロ特別料金!」


「物凄い…美人?」



「今ならポッキリ二万! ね、社長! 助けると思ってお願いします」



「頼まないでよ、断るの苦手なんだから」