窪は儚き夢を見る02『通勤中年』

「こんなに財布厚い…なんで?」




…おっと、思わず口から漏れちまった。




通行人の視線、割と気にするタイプなんですよ。



注目なんか浴びたってロクな事ありませんから。



しかし…財布なんて盗られた事はあっても、入れられたのは初めてだなあ。


こんな事あるんですねぇ。




ネズミ小僧でも来たみたいだなあ。



「生きてりゃいい事あるもんだ」


アタシが人様から盗るなんて事は有り得ないから犯罪にはならない筈。



あるならその逆でしょう。





だから理由はともかく、ついつい顔がほころんじまう。



ただでさえ地蔵みたいな顔って言われてるのに。




あ、毛がないもんで(笑)。



「市川ー市川ー」



「おっ!」




市川で人が結構降りるから、椅子があく事があってね。



座れました。



なんだか今日はツイてるなあ。



ただあたしゃ去年痔の手術をしてましてね。



座り過ぎも本当は良くないんですがね。



痔の手術、した事あります?




もう強烈に痛いんですよ。




触るだけで痛い飛び出た肉を




グリグリ!




って押し込むの。




あれ、二度とやりたくないですね。



人生三大激痛の一つです。




シモの話はさておき、電車の中ではいつも景色より人を見てます。



あの人は家族持ちで、あの人はキツい性格…あの娘がこの電車で一番可愛いとか、ね



その車両一番可愛い娘には毎日心の中で表彰してるんですよ。




「パンパカパーン!貴女がこの車両のNo.1です!」




ってね(笑)。




昔飲んだ秋田書店の編集長も同じ事をやってるって言ってました。




へへ、結構みんなやってるんですよね。





「水道橋ー水道橋ー」





お、ついた。




いつも健康のために水道橋から歩く事にしてるもんで。





会社までは駅から10分くらい…まあ小さな印刷会社です。




ボーナスも五万くらいしか出ないような、ね。





まあこのご時世、出るだけマシですかね。



贅沢いっちゃバチが当たります。




「おはようございまーす」





「え!?窪?」




「窪さん…なんで…?」




「………窪…!?」





なんか…皆の視線が…変 ですね…!?






注目…集まっちゃってるなあ…?