窪は儚き夢を見る01『振り出し』

いつだって、下を見て生きてきた。




しかし。




ふともう見る下が無い事に気がついた時、人は何をすればいいのだろうか。




窪泰明39歳。




この物語は実話を元にした、平凡な中年の非劇…ではなく、喜劇である。


『2月15日』



「う…ん?」



その日目覚めた時、いつもと何か違うような気がしたんですよ。



「…?」




違和感?




そんな格好いいもんじゃないでしょ。



ただ…何か忘れるているような気がしていただけで。



「昨日深酒しすぎたなぁ。まあ会社に行けば思い出すだろ…」



独り暮らしだとね、1人言が普通になっちゃいますね。



嫁?



そんなものいませんよ。


自慢じゃないけどあたしゃ女にモテた事なんかないんですから。


どこぞの犯罪者が言ってましたっけ。


「人生で三度あるモテ期が小学三、四、五年生」


だかってね。



そんな理由で人を殺めちまう。



馬鹿言うなってね。



あたしなんかね、モテ期なんて一度も無いんですよ。


なにしろご覧の通り十歳は老けて見えますからね。



二十歳にして



“中年”



てあだ名でしたよ。



見た目、悪過ぎて女の子からは恋愛対象には見られませんでしたねぇ。



ああ、だからといって童貞じゃないんだ(笑)。



そこはね。



一応言っときますよ。




大学の時、凄いあばたの…




まあ言っちゃなんだけど可愛くも無い…



え?




ブス?





まあ残酷に言えばそうかもしれませんねぇ…。



初体験、やり方がわからなくて、女がシャワー浴びてる間に友達に電話して聞きましたよ…。




それから後は風俗専門ですね。




おっと…そろそろ家、出ないと。



目覚ましかけてなかったからギリギリになっちまった。



『バンバン!』




ウチの玄関のドア、建て付け悪くてね。


二回しめるといいっての、最近発見したんですよ。



へへ、こういう小さいテクニック見つけるの、得意なんですよ。




会社まで?




この本八幡の家を出て電車に乗って神保町まで…歩きも入れてまあだいたい一時間くらいですか。




ん?



…なんだか財布が分厚いな。



ヒイフウ…20万入ってる!?




これ…どういう事?




中身がずいぶん…増えてる!