終着駅12『文は口より意味がある』

退院は、案外スルッとできた。


ドラマなんかで見る医者はもっと食い下がって入院を強制するような気がしたけど…僕の身体はそれほど悪いという事なのかもしれない。


家に帰って一番先にやった事は、もちろんさっちゃんへのメールだ。


『ごめんね、さっちゃん。びっくりしたよね。残り少ない時間をさっちゃんと一緒にいたかったんだ。ごめん』


元カノですら対応に困り引いてしまったこの事実を、できればさっちゃんに隠していたかった。


さっちゃんにもし引かれたら、やっぱりそれは悲しいから。


僕は、菜摘に引かれた事がトラウマになっていた。


あの対応をさっちゃんにされたら…そんな事、考えたくもなかったよ。


でも、さっちゃんには知られてしまった。


最近の神様の意地悪には慣れてきたけど、僕に残されたわずかな時間でのさっちゃんとのコミュニケーションまで奪われたら、さすがに辛過ぎる。


だけど返事を待つしか…僕にできる事はなかった。


「IloveYou…」


「きた!」


初メール以来、さっちゃんからの着信音を尾崎豊のIloveYouにしていた。


『今待合室に来たよ。僚ちゃん大丈夫? 身体の事聞きました。大変だとおもうけど、僚ちゃんが良かったら、支えになりたいな…』


………さっちゃん…。


もう君は、充分支えになってくれている。


菜摘に冷たくされた分、彼女の優しさが染みた。


『ありがとう! もう支えになってるんだよさっちゃん! 君がいてくれたおかげで、1人の時も辛くない。さっちゃん、君の事が大好きです』


引かれなかった嬉しさからテンションが上がり、ついに告白してしまった。


ほんの数日だけの接点なのに、気持ちの悪い奴だと思われてもおかしくない。


返事は……?










『さっちゃんも







「やった…」






涙が出た。


ここしばらくの悲しさや悔しさの涙じゃなく、嬉しくて流した涙だった。


よくある歌詞なんかと違って、これが本当の


“最期の恋”


なんだ。


僕にも最期に幸せが…


『嬉しいな! さっちゃんが退院したらさ、渋谷行こうね!』


『うん! 病室に戻るから、明日またメールするね!』


『了解!』






僕は、次の日も、その次の日も、さっちゃんからのメールを待ち続けた。





それが最期のメールだったとは気がつかずに。