終着駅08『哲学的境地と恋』

…カウンセラー?


確か死を目前にした人はカウンセリングしてもらったりするんだっけ。


「…インチキくさ。それで死ぬ時が伸びる訳じゃないんだ。誰がカウンセリングなんてしてもらうかい」


別れた彼女とコミュニケーションをとるのは、もうやめた。


僕の心は、さっちゃんで埋め尽くされていたから。





―――――翌日。





僕は会社に行って、診断書と退職届を出してきた。


突然の退職だったけど、事情を知った会社の人達は色々便宜をはかってくれたよ。


これで晴れて無職だ(笑)。

帰宅して、横になって色々考えた。


癌告知をされてからというもの、僕はずいぶんと色々悩む事が増えた。


これが哲学的境地というやつなのか。



今、強い痛み止めを飲んでいるおかげか、あまり癌っぽさは出ない。


僕の癌は大人しいのか、まるで普通の日と変わらないようだ。


いつか薬で止められない痛みがやってくるんだろうな。


でも明日は来ないでほしい。


明日はさっちゃんとまた会える。


そうだ、新しい携帯で彼女との写真を撮ってもらおう。


昨日ファミチキをおごってもらっちゃったから、明日はお寿司でも買っていこうかな


まだご飯に誘うのは早いだろうか。



でも僕には2ヶ月弱しか残された時間が無い。


「…………………結局なに考えたってそこにいきつくんだよな……」


人間って、支えがあるだけじゃもの足りなくなっちゃうんだろうか。


さっちゃんと仲良くなる。


今の僕には、少し贅沢かもしれないな。



その日はまた、あまり眠る事ができなかった。


翌日、僕はさっちゃんとみっちゃんにお土産を買った。


みっちゃんには、今度は松坂牛の霜降り肉を100グラム。


さっちゃんには、ゴディバのチョコとデコの仕事で肩が凝るだろうからマッサージ機


奮発した?


僕にはもうお金の使い道が無いからね…。


ところが、どこかに行ってるのか、みっちゃんはいない。


さっちゃんはそろそろ来る時間だから、しばらく僕は待つ事にした。


「…待つのが楽しいなんてな…」



でも、時間を30分過ぎてもさっちゃんは来なかった。


「どうしたのかなあ…」


すると、1人の女性がこちらにやってきた。


「さっちゃん? あれ?」


さっちゃんに似た黒髪の女性だった。


「僚ちゃん…さんですか?」