終着駅05『僕はもう、死んでいる?』

「ん…あー…」


いつのまにか眠っていたらしい。


時計の針は9時を回っていた。


「…会社…どうするかな…」


僕の会社は、赤坂にあるそこそこ有名なメディアの会社だ。


ご多分にもれず不況で業績が悪くて…本業ではなく不動産でしのいでいる感じ。


「僕一人いなくても大丈夫だろ」


給料なんてもらっても、どうせもうすぐ意味がなくなるんだ。


今日は休む事に決めた。

だが休んで何をする?


家族も彼女もいないし、旅行に一人で行っても死の恐怖と闘える自信が無い。


少しでも楽しい事をするべきか?


それともお寺でも行って、死を怖く感じないように悟りを開く努力でも?

悩んだ末、パチンコに行く事にした。


パチンコなんてほとんどやった事がない。


初めての事にチャレンジしてみようと思った。


あれだけ中毒の人もいるんだし、気も紛れるかもしれない。


「そうと決まれば!」


胃に癌が出来てるとわかれば、なんだか敵に栄養を与えるみたいな気がして食は進まなくなる。


僕は、食事もとらずに近所のパチンコ屋の扉をくぐった。


台はなんでもいい。


損したってもいい。


気分を味わうだけだ。


昔から好きだった拳法漫画の台前に座り玉を流し込む。



でも、パチンコが大失敗だとわかったのは、30分程立ってからだった。


「お前は既に当たっている」


隣の客が当たっていた。


目にも耳にも景気の良さが飛び込んでくる。


「…待てよ?」



これって…確かもとの台詞は



「お前はもう死…」



…。



「失敗だ…」


だが席を立とうとした瞬間、僕の台もまわり出した!


昨日の災難と釣り合いをとるかのように、目の前の台は当たり出したけど…


「あの台詞…見たくないのに…」


まるでこの台が、僕が死ぬ事がわかっていて席を立たせなくさせているみたいだ。


30分後、ストレスと引き換えに6万円の勝ち金を手に入れ外に出た。


「どうしろって言うんだよ…」


パチンコ屋の前にいた猫が微笑みかけてきた(ような気がした)から、角の魚屋で大トロを三千円分買ってあげた。

六万円の最初の使い道だ。

猫を喜ばせても意味が無いかもしれないけど、これくらい変わった事をやってみたくもなる。


「へへ、美味しいかい? こんな高いの初めて食べただろ」

「あなたの猫?」


「え?」