ジ・コントローラー〜司る者押愀菽紂

すなわち!

カイムは信者1人1人じゃなく、あんたを幸せにするための教団だって事だ!

教祖雁波!

いや本名前田アキラ!

人間が上質かどうかは本人がいかに努力し自分に責任を持つかで決まるものだ!

現実社会からブレない努力!

他人への思いやり!

それらを無視し自己の上昇の為のみに集まったコミュニティが上質世界な訳等ないだろう!」


教祖という守られた立場にいるだけに、ここまでの社会論の責めに、当然答えを用意している訳が無い。


「ク…ソ…貴様何者だ! 誰かこいつを連れ出せ!」


「僕こそは万物を司る

“コントローラー”


だ!

カリキュラムでは他人の悪口をぶつけて絶望に落とし、高い金でゴミを売り金をせしめ、女性信者は身体を汚す!

貴様の描く薄汚れた上質世界は貴様だけの欲得のために作られた腐った世界だ!

正体がバレたから僕を外に出す?

それは貴様が僕の話を認めたという事だぞ!

偽りで固めた人間の口にする上質世界などこの世にありはしない!」


「ガアアア!…黙れ黙れ黙れ! ええい今日は終わりだ! 小僧! 覚えておくぞ!


この取り乱し方…僕の狙い通り、完全に崇高な神の位置から、髭面の太った教祖は醜い人間の位置まで転げ落ちた。


「ザワザワ…」


「フフ…皆さん! 教祖は逃げました! これでわかったでしょう! カイムは偽物です! どうか騙されないようにしてください!」


「ワアー!」


会場は僕へのスタンディングオベーションと拍手で包まれた。

その場だけ見たら、まるで僕が教祖に見えるかもね。


「匠! 匠! 匠!」


仕掛けは大成功だ。


「恵さん、帰り支度をして僕がいた部屋に行っててください」


マイクで呼びかけ、僕のオンステージはこれにて終了だ。


部屋では帰り支度を終えた彼女が待っていた。


「匠さん…」


「目が覚めましたか?」


「…カイム、偽物だったんですね」


「うん。ここに来てからずっと様子を見ていましたが、やはり…」


「…」


洗脳が溶けた今、最も気を使わなくてはならないのは

“今”

だ。


「でも、私の事…当てられたのはどうして…」


「叔母さんが向こう側の人だから。色々あなたの情報を漏らしていたんですよ」


「そうですか…」


ガチャリ


数人の部下を連れた教祖が部屋のドアを開けた。

その手には銃が握られていた。