ジ・コントローラー〜司る者『心の寄りどころとは』

「遠金さん、あなたはソーマエネルギーではなく、気持ちを強く持てば幸せになりますよ。いい物をあげましょう。このブローチ…これはアンデスで見つかった水晶が組み込まれたもので、守護の力を強めるんです」


僕は、わざと手品を使ってスカラベ型のブローチをいきなり出した。


「!」


効果は勿論嘘だよ。


男性や女性と付き合うという事は寄りかかる


“寄りどころ”


を作るという事。


こうした精神的に弱い女性は支えを必要としているんだよね。


彼女は、カイムという宗教自体を、付き合っていたDV男の代わりに寄りどころにした


僕は更に宗教に変わる寄りどころを用意した訳だ。


霊的なブローチを持っていさえすれば大丈夫だって。


「私…これでもう大丈夫ですか?」


「フフ…君はもう大丈夫。それをつけているなら反発してしまうからカイムに頼らない方がいい。今晩泊まる部屋に僕を案内したら、恵さんを呼んでそのままカイムを出てください」


「はい…」


僕を洗脳しようとした準幹部は、もはや潤んだ目で僕を見るだけ。


基本人間は


“これでなければ駄目”


より


“これが素晴らしいから寄りどころなんだ”


という思い込みによって寄りどころに認定する。


つまり、もっと素晴らしいと思える変わりがあれば案外にスライドは可能なものなんだよ。


彼氏や彼女を乗り換えたりする人を見ればこの理論はわかりやすいでしょ?


無論愛着も重要なポイントだろうけど、親兄弟レベルならともかく、教祖がピタッと性格診断をしたくらいではまだまだつけこむ余地があった。


「このドリンク、部屋で飲むからもらっていくね」


「はい…お部屋に案内します」


こうしてまず一人カイムから足抜けさせる事に成功した。


ただ…あのブローチ、恵さんに使おうと思って持ってきたんだけどな…。

恵さんには他の寄りどころを用意しなくては…。


「こちらが匠さんのお部屋です」


「ありがとう。何かあったら六本木のアジャルダンに僕を訪ねてきてください」


「はい…」


さて、恵さんが今晩教祖と一晩を供にするくだらない修行を阻止する方法を考えなくちゃね…。


「匠さん、失礼します」


「おっと…! そうだ恵さん、喉が乾いたでしょ?」


「え? いえ…」


「これ、飲みなさい」


「は…い」

僕は、カイム茶を彼女に差し出した。