ジ・コントローラー〜司る者─悒札潺福竺始』

「さて、それでは皆で上質世界に進むためのセミナーを始めます!」


薄暗い室内で15人の視線を僕から強奪したのは、運営側らしい男性の一言だった。

こうしたセミナーでは


“リーダー”

と呼ばれる向こう側に染まった人間がいる。

短髪で清々しい印象の彼が今回のそれなんだろう。

セミナーに関わる人間は外見を案外に重要視される。

まずは外見から入る人間の心理を上手く利用している訳だ。


「まずは自己紹介と…自分の欠点を皆順番に言ってもらいます! 皆はその人に対して抱いた欠点を大声で指摘してください! 今回新しく入った人からお願いします!


「ふうん…シェアか…」


「匠さん、シェアってなんですか?」


「こういうセミナーは“ダイアード”っていう2人一組のパターンと多人数で行う“シェア”っていう方法に別れるんだよ」


「2人一組のパートもあります」


「だろうね…おっと、あの子からか…」


まずはいかにも田舎から出てきたようなやぼったい格好をした、お世辞にも美人とは言えない女性が前に立った。



「桶川真奈美、21歳で自分の欠点は気が弱い事です!」


「しゃくれブス!」


「服のセンス最悪! どこで買ってるの!」


「気が弱いとか自分で言ってんな!」


罵詈雑言が始まった。


これは、自らの欠点を他人から攻撃的に浴びせられる、それを受け入れる事で自己をどん底まで落とすための行為だ。


ここから皆で励ましあって(僕流に言えば傷の舐め合いに近いんだけど)、レベルアップという同じ目的の仲間である確認と這い上がりにおける充実感を体感させる。


つまり?


心の壁を取り払って、しかもこのセミナーが居心地いいと思わせる手段という事さ。


宗教だけでなく普通の自己啓発セミナーでよくあるマインドコントロール方法だね。


「変な髪型!」


「スタイル最悪!」


「…気が弱い人にはさぞかし効果が高いだろうねぇ」


案の定彼女は泣き出した。


「う…う…」


そもそも気が強くて大丈夫だと思っててもこの状況でこの攻撃はかなりの人に効果があるものなんだよね。


「あーあ…泣き崩れちゃった…可哀想に」


「はい、では桶川さん下がってください。次は…匠さん!」


僕の番だ。


「フフ…匠條史郎です。27歳で…欠点は…」


「匠さん! 欠点は?」


「無いなあ」


「な…なに?」