ジ・コントローラー〜司る者ぁ慇脳される人』

「精液いっ!?」


「無い話じゃないさ。どれ、恵さんの話を聞きに行こうかな」


リビングに座っている恵さんの向かいに僕は腰掛けた。


「やあ」


「…こんばんは」


「カイム新教はどうやって知ったの?」


「…そんな事聞いてどうするんですか?」


「僕もそういうの興味があってさ。新聞広告も打ってるみたいだよね?」

「…先月父が死んで…お葬式に来ていた叔母が進めてくれたんです」


「…叔母さんはカイムのなんなの運営側の人?」


「教員です」


「カイムはどこが素晴らしかったのかな」


「教祖の雁波様に初めて会った時に、私の子供の頃の話や性格、男運が無い事なんかもピタリと言い当てられたんです。私の男運が悪いのは、ソーマエネルギーが足りないからだって言われて…」


「ソーマエネルギー…」


「しかもカイム新教はソーマエネルギーの高い人間達で上質世界を作ろうとしてるんです!」


彼女はどこか恍惚とした笑顔で遠くを見ながらアジテーションのように説明してくれた。


「へえ…ぜひ教祖にお会いしたいね」


僕も負けじと最上級の笑顔を答えてみたよ。


「本当ですか! 今週の土日、カイムのセミナーが富士であるんですけど、ご一緒に行きませんか!」


「うん。じゃあ当日車で迎えに来るよ!」


それだけ約束して、僕と田邊君は帰路についた。


「なんなんですかあの女!」


「な…何が?」


「何が上質世界だってんですよ! 気持ち悪い!」


「先進国の新興宗教は、命や魂を救うよりも優れた人間や社会を目指すモノも多いからね」


「精液飲んで上質な人間になれりゃ世話ないですよ!」



「まあ確かに。しかし彼女は可哀想な人だよ」


「どこが!」


「人間は自分本位のAタイプと他人本位のBタイプに分類できる。Aタイプは、僕や君のように自我の強いオンリーワンタイプだ。このタイプはプライドが高く他人に迎合する気持ちが薄い」


「Bタイプは?」


「多数の人間に迎合する事で安心、安定を得るタイプ。世の中にはこちらのタイプの方が圧倒的に多いんだ。この人達は自己啓発セミナーや宗教等のカモになりやすい」


「恵さんはBなんですね。どうしたら洗脳が溶けるんでしょう」


「うん…車で現地に向かう途中、色々話して洗脳を説くカギを作ってみるさ。それと、仕掛けを考えるよ…」

うん、面白いやり方が浮かんだぞ!