哀唄『寂し過ぎて悲し過ぎて』

「そういえば青山、確かに見たことない娘と話してたな。あの娘多分他の卓にいたんじゃないか?」

「………そ…うか…」


彼女は、飲み会に呼ばれていなかった。


最初から寂しいと口にしていた貴美。



俺は、全てを理解した。




“たまたま”

あの居酒屋に1人で来ていた彼女は、楽しげな俺達のテーブルの雰囲気に

“つい”

座ってしまったんだ。


俺はそれを飲み会メンバーだと思って声をかけちまった…。

あまりに寂しい女…人間に飢えていたところに、俺に出会ったのか…。

髪の毛の御守りも、俺のためなんかじゃなくてきっと自分を常に身近に感じて欲しかったんだろう…。


そういえば、冷静に考えるともう一つ思うところがある。

「名前を呼んでないなんてェェ! よくも嘘ォォ!」

って台詞。

出会ってから一週間の間、彼女の名前を呼んだ事なんてなかった。

俺はずっと

“君”

って呼んでいたから。

彼女はそれを自分の名前

“貴美”

と呼ばれていたと思ってたんだな…。







あまりに悲しい女だった。






あまりに辛い出来事だった。






ただ口にするだけじゃなくて、本当にプロファイリングを使っていれば…。


俺にとっての魔の一週間は彼女にとって楽しかったんだろうか。


身近に危機は転がっている。

無神経に生きていて良いはず等なかった。


「これからは…なるべく日常的にプロファイリングを使う事にしよう…」

ある程度謎がとけたものの、俺にとっては難題が残っていた。


そう、あのマンションの部屋をどうするかだ。


惨劇から3日たったが、そろそろ部屋に戻らなくては保険証も着替えも無い。


だが問題は何より…まだ貴美がいたら?



それが恐ろしいために、更にそこから数日経過したが…このままでは何も進まない。





決意の末、中山を連れ…部屋に戻る事にした。


「だ…大丈夫っスカね…」


「…自信ねぇよ」


「ちょっと先輩!そんな事言わないでくださいよ!」

「うるせぇな! お前も注射器目の前に突き立てられてみろ!」

「スイマセンスイマセン…じゃあ…あけますよ…」


ギィ…


そっと扉を開けると目に飛び込んできたのは…

「うっ!」

「ゲッ!」