哀唄─愀貪匹蕕譴唇Α

「私達……付き合って……ないの…?」

血の気の失せた彼女の顔は…口元がひくひくと動き目は白目を向いて…人の顔というのはここまで変わるものかと初めて知った。

「あたしィは……良一の事、本気で好きなのに……良一はァ…違うの…?」

怒りのあまりか、ややロレツが回らなくなってきているようだ。
もはや別の世界の生き物のようにオーラが変貌を遂げた貴美に、正直俺は気圧されてきていた…。

「そんなにすぐ人を好きになんてなれないよ。好意はあったけど、それだってこんなに…」

「じゃあァ……なんであたしィと寝たのォ…」ついに会話を遮るようになってきた。

続けて彼女は立ち上がる。

「こんなにィ……好きなのに……なんで…なんで…なんで……」

自分の世界に入ったようだった…。

と、突然!

「汚らわしい!」

彼女は、さっきまで台所で洗い物に使っていた金ダワシをダッシュで取りに行った。

「な、何を…」

「あたしを好きでもないのに!あたしを!汚らわしい!汚らわしい!汚らわしい!」

ビシュッ!

ビシュッ!


叫びながら貴美は、金ダワシで自分の腕や首を物凄い勢いでこすりだした!

見たこともない自傷好意。

彼女のやることなすことは、あまりにエキセントリックで…いちいち俺は後手に回ってしまう…。
「な、何やってるんだ!」

ビシュッ!

ビシュッ!

こすれたて削れた皮と血が床や壁に飛び散り、生臭いフラクタル模様を描いている。

「お、おい、やめろって!」

「汚らわしい!汚らわしい!」

ビシュッ!

ビシュッ!

血しぶきは鳴り止む事無く肉が奏でる生々しき音は、俺の身体を凍り付かせていた。


既に貴美の腕や首筋は酷い火傷の後のように血と皮の無い肉がベトベトになっている

このままでは…

「や…やめろ!」

バンッ!

精魂を振り絞ったタックルで貴美を倒したのは、事態が始まって恐らくは二〜三分たった頃。

倒れた貴美は、よろけながら立ち上がりトランス状態に陥った怪しい白目で俺を睨んできた。

「あんたがァァ……悪いのにィィ……よくもォォ…」


どうやらターゲットは…俺に変わったようだった…。