哀唄А惷鬚者の嘆き=火に油』

直接対決を決意した俺は、断固たる決意の元、マンションの扉を開けた。

「あら良一、おかえりなさい」

貴美は、いかにも当然のような涼しい顔で俺を迎える。

「なあ! ちょっと座ってくれる?」

「なに?」

俺のお気に入りの椅子に腰掛けた貴美を見て、ここのところの鈍い気持ちがついに形となってこみ上げてきた。


俺はもう、彼女を

“嫌い”

になっていたんだ…。

こうなったら、思いの丈をぶつけるしかない。

自分を抑える事にためらわなかった。

だけど…今思えば、それがどんな結果になるか、想像はついた筈だ。

「なあ、なんで何回も電話をかける?」

「良一が出ないから」

「一回かけたらわかるだろ? すぐかけ直さないのは事情があるか気がつかないかどっちかだって!」

「…………だから気付いてもらおうと思って」

「…なんで合い鍵なんか作んだ!」

「…………………いつでも良一を待っていられるようにって」

「いきなり合い鍵作るなんてどうかしてるよ!」

「……………………………じゃあ下で待ってればいいの?」

「そうじゃない! 俺たち、まだ付き合ってもいないのにこっそり合い鍵作ったりするのはおかしいって言ってるんだよ!」

「……………………………………付き合って………………ない……?」

「そうだろ? 付き合おうとか言ってないじゃないか! ただヤっただけだろ! 俺はお前の名前だって一度も呼んでいないじゃないか!」

「…………………………私達……付き合って……ないの……?」


下を向いていた彼女が俺を見上げたその顔は、まるで鬼のように引きつっていた…。