哀唄ぁ愀磴靴で函

「ねぇ、なんで帰ってきてくれなかったの?」

「…だって…飲み会だって言ったじゃん…」

貴美の目が鋭く光った。

「あたしが待ってるの知ってたのに! お酒を他の人と! 楽しく飲んでたなんて酷い!!」

「…ごめん」

フロア中に響き渡るその声に、俺の酒に酔った頭は、思わず謝っちまった。

この手の偏った人間と交渉する場合、謝る事にはメリットとデメリットが存在する。

メリットは…まあ話が早く終わるって事だ。

しかし、デメリットは遥かに痛い結果を出す事を…この事件で俺は知ったよ。

「そうでしょ! 私は良一の事をずっと待ってるのに、こんなに! 遅く !なるなんて!」

「わかったわかった…そんなに叫んだら近所迷惑だから、とりあえず部屋に入ろう」

勝ち誇り、なお大声で叫ぶ貴美…この手の人間に譲りすぎれば調子にのってエスカレートする。

デメリットの大きさと後の影響を考えれば、ここは毅然とした態度をとるべきだった

貴美は、ドアを開けて玄関に入ると、今度は別のスイッチが入ったようだ。

「良一、愛してる…」

そう言いながら抱きついてきた、彼女の潤んだ目に映った俺は、なんとも言えない表情をしていた。

この変わり身…。


彼女は、確かに普通じゃない。






明らかに激しい躁鬱の気がある素振りだ。




その晩のベッドでは自分の身体を貸し出しただけのような感覚…もはや倦怠期の夫婦の義務のようなものを感じていた。



これ、どうすればいいんだ?


「…………ん…」

昼過ぎに目覚めると、貴美は既にいなかった。
昼からテレオペのバイトとか言ってたな。

「……ゆうべは悪夢だったな…」






しかし。






その悪夢はまだ覚めていなかったのだ。






テーブルの上には手紙と共に、奇妙な物が置かれていた。

「良一大好き。私だと思っていつも持っててね」


それは、おそらく抜いたと思われる数十本の毛根のついた






“髪の毛”







だった…。