哀唄◆愴畄狹着信』

昨日初めて会った娘が50回の着信なんてただ事じゃない。


何かトラブルがあったのか?


俺は慌てて折り返した。

「もしもし!?どうした!?」


だが返事は予想だにしないものだった。

「良かった…嫌われたかと思った…」

「えっ…………?」

「次いつ会えるかなと思って」

「………………」


なんて言っていいかわからない俺は、黙っちまった。

だって…いくら家に泊まったからって、昨日会った娘を好きになんてなる訳がない。


“嫌われたかと思った”

という以前に好きじゃあないんだ。


貴美が一体何を言ってるのかわからなかった。

「………………」

「もしもし?良一?もしもし?」

「あ…ああ、悪い、ちょっとスケジュール考えてて」

「そうなんだ。今晩か明日はどう?」

「今晩…は友達と約束があってさ。明日にしよう…か」

「友達?誰?」

「誰って…言ってもわからないだろうけどケンてやつとシローってヤツだよ」

「ふうん…じゃあ早く終わったら連絡してね」

「わかった…」



……………まあ、ちょっとウェットなタイプなんだろう…な。


「…ついてないって言ってたし…きっと寂しがりなんだろう…な…」



しかし…俺はこの時すでに蟻地獄の螺旋に足を踏み入れていた。

その夜、飲んでいる時にかかってきた電話は、まさに地獄の第一歩。


この後起こる惨事への序曲となる。




建設会社社長の親父からの、小遣いというにはあまりにも高額の金を財布に入れていた俺は、学校を中退したばかりの後輩中山と、ケン&シローの北斗の拳コンビ(あだ名)と居酒屋で盛り上がっていた。

「センパイ、なんかうかない顔してますね」

「うん?昨日初めて会った女が今日50回も電話してきてな」

「そ…そんで?」

「何か事件でもあったかと思って折り返したら、第一声が『嫌われたかと思った』だと」

「うわ…キツいす…ね」

ピリリリリ!

「おっと電話だ」


「その娘からだったりして〜」


ディスプレイを見た俺はあっという間に嫌な気持ちになっちまった…。



「……中山、当たりだ」