桜・ミノムシ・モンブラン



昨年の10月から、今年の3月にかけて、ほとんど休むことなく、連日、公演と移動を続けてきたので、4月はのんびりと花見などをしています。

花見と言っても、大人なのでブルーシートを敷いて騒いだりはしません。
スキットルにシングルモルトを入れて、ちびちび啜りながら新しいマジックの構想を練って・・・という感じです。

桜を眺めていると、気の早いミノムシを発見。
なんだか懐かしいなあ、と思いながら早速ウィキってみると、ちょっと驚きました。

ミノムシのオスは、命がけで飛び回ってメスを探し、見事交尾に成功すると、交尾後は死んでしまうそうです。そしてメスは、自分が潜んでいたミノの中で子どもを育て、子どもが大きくなると、ミノの下の穴から落ちて自殺するそうです。
まさに子孫を残すためだけの一生ですね。

花見を口実に、若い男女が酔って騒ぐのも、あるいは子孫を残すための立派な努力なのかもしれませんね。。。


うちの若手マジシャン「モンブラン」が、青少年音楽芸能協会の会報向けに「何が私をこの道へ導いたか」というテーマの手記を載せました。
個人的に面白かったのでコピーします。長いので、忙しい方は読まないでください。暇で暇でしょうがなくて、何でもいいから何か読みたい、という方が居ましたら、暇つぶしに読んであげて下さい。。。



「何が私をこの道へ導いたか」

モンブラン



どーせ何をやっても続かないし。
どーせ楽しくないし…。
当時、思春期の僕はどーせが口癖。
悲観的な思考が強かった。

今思うと当時から人前に出て何かをしたいと思う気持ちはあったのだろうが、どーせ僕なんて…と消極的だった。お世辞にも真面目とは言えない中学3年生。友達と悪さをしては先生や親に怒られていた。

そんなある日、いつものように授業を抜け出した。先生が黒板へ書き物をする間に、ドアの音を立てずにスッと抜け出すことはもうお手の物。
まぁまたどーせ怒られるだろうな、などと思いながら今日は学校のどこを探検するか考えていた。しばらく歩いてふと目に止まったのは図書室。そー言えば図書室なんてほとんど入ったことがない。どーせつまんないだろうけど…と足を踏み入れた。

何か遊べそうなものはないか、グルッと中を一周してみるが当然本以外置いてあるわけもなく、そこは僕にとって案の定つまらない場所だった。
床にゴロッと横になる。あーあ、毎日つまらないなぁ。どーせ僕が何をやったところで世界が変わるわけじゃないしなぁ…。
そんなことを10分ほど考えながら本棚に顔を向けると、一番下の棚にあった本が妙に気になった。図書室を利用する人でも手に取らないような場所じゃないだろうか。

なんだこれ??
その手に取った本のタイトルは「忍術の本」
ぷっ!あははっ!こんな本あるんだ!
つまらない図書室で唯一笑った瞬間。別に忍術に興味があったわけではないがせっかくなので読むことにした。

今は内容なんてほとんど覚えていないが、へぇ〜とじっくりと読んだことを覚えている。そして今でもはっきりと覚えているのは最後の3ページ。忍術と手品の関連性ということで載っていた「手品の種明かし」。
それが僕とマジックの初めての出会いだった。

コインとハンカチをつかった簡単なマジック、少し練習したらすぐできた。ただ、当時ひねくれていた僕は、やった!これでマジシャンになれる!なんて思わなかった。すげー簡単、なんだすぐバレるじゃん。それが本心。それでもせっかく覚えたからと次の日の昼休みに友達の前でやってみた。
「えぇっ!?えっ?なんで?なんでそーなんの!?」
「ちょっと…もう1回やってよ?!」
自然と笑顔になる友達、自然と笑顔になる自分。つまらない毎日の中でマジックをするときだけ楽しくなった。
高校生になってもマジックは続けた、初めて会った人も手品をすると割とすぐに仲良くなれたし、何よりマジックをしているときは自分が楽しかった。ただ、だからといってそれで真面目になるわけではなかった。家に帰らないことも増え、生活は荒れていた。

相変わらず先生や親に怒られる日々。
高校やめようかな…そんなことを考えるようになった高校3年生のある日。
実家が営んでいる駄菓子屋に小学2、3年生ぐらいの男の子が買い物に来た。先生に怒られたのだろうか?とても暗い声で「…これ、ください。」と10円のガムを持ってきた。受け取った10円玉を見てサッとポケットからハンカチを取り出す。

「いーかぁ〜?チョッと見てろよ〜。この10円玉が〜…」初めて僕が覚えたマジック。
「えっ!すご−い!!お兄ちゃんはマジシャンなの?!」さっきまで暗かった男の子は笑顔になって走って帰って行った。なんだか少し照れくさいような嬉しさだった。
次の日勢いよくその男の子がお店に入ってきた。

「お兄ちゃーん!友達連れてきたー!マジックやってー!」昨日より人数が増えた小学生、下校中の小学生達の目にも止まり「なに?なに?」とどんどん集まってきた。自分でも信じられなかった、大行列だ。

目をキラキラさせながら僕のマジックを食い入るように見る子供達。思わずつられてしまうくらいの笑顔。人のために何かできる自分がいる。世界が変わった。マジシャンになろうと決めた瞬間だった。

それがきっかけで僕は高校へも通うようになり無事に卒業、就職した。その後カフェやバー、イベント等でマジックの修行を積み、今の道を少しずつ歩み始めた。悲観的な僕はもういなかった。

「どーせやるならとことんやってやる。」

プロになって数年、怒られてばかりだった両親や先生からも今では「頑張れよ!」と後押しされるようになった。たくさんの人と出会い、数え切れないくらいの笑顔を見ることができた。
たくさんの思いが詰まったマジック。
一言で表すならば、僕にとってマジックとは「宝物」。