失恋

そいつは、ある日突然現れた。

うちの前でバッタリ出会ったそいつは、最近上の階に引っ越してきたらしい。

人懐こい性格で、端正な顔立ちに綺麗な目。黙っていても周りが放って置かないであろう、ザ・人気者タイプ。

どういうわけか、そいつがやたらと私に構ってくる。会う度に愛くるしい笑顔で、馴れ馴れしく近寄って来る。



でも、私は相手にしなかった。

「どうせ皆にそうしてるんでしょ。」

そう思って逆に冷たく接してた。

けど、今思えば、そんな風に意識してる時点で私はヤツのことが初めから気になってたのかな…

そして、毎日のように続く積極的なアプローチに心が揺らいで、私はいつのまにかヤツに会うのが楽しみになっていた。


今日、初めて私の方から話しかけてみた。

「あんたってさ、誰にでも、そんな風に優しくしてるの?勘違いしちゃうじゃん。」

…本当はもっと可愛いこと言いたかったのに。

ヤツは無言で寄り添ってきた。



え…



何?どういうつもりなの?



私のこと…


好き…


なの?



そう思って、そっと撫でてみたら


ヤツはついに牙を剥いた。



ふご!!



そう言って引っ掻いてきた。


やっぱり、散々そっちからアプローチかけといて、こっちが行くと手の平返すってわけね。

あなたにとっては遊びだったのね。

ねぇ、

ねぇってば。







ねぇ、こっち向いてよ。

ずるいよ。